先日、クリニックから最近のTRAb検査結果をいただきましたが、
重回帰分析を使ったら、FT4との関係を表現できる回帰式を作れるのではと思い
適当に変数を選んで Excel で分析したところ、かなり良い予測結果が得られました。
詳細は以下のとおりです。
1.変数の選択
計算したいのは「FT4」ですので、これを目的変数にして、
関連していると考えられる「TRAb」「メルカゾール(MMI)の服用量」「TSH」を
説明変数としました。
目的変数(Y) : FT4
説明変数(X1): TRAb
(X2): MMI服用量
(X3): TSH
2.データの準備
治療開始前の昨年7月22日から先日2月6日の血液検査結果とMMI服用量を
データとして使用しました。
TRAbは測定していない日もありますが、前後の数値から適当に補間して
数値を補いました。 観測数は9です。
使用したデータ
| 検査日付 | TRAb | MMI 服用量 | TSH | FT4 |
| 2009/ 7/22 |
4.4 |
0 |
0.00 |
3.0 |
| 2009/ 9/ 2 |
4.3 |
4 |
0.00 |
1.0 |
| 2009/ 9/16 |
4.1 |
4 |
0.00 |
0.7 |
| 2009/ 9/30 |
3.5 |
4 |
0.18 |
0.5 |
| 2009/10/14 |
2.8 |
3 |
1.53 |
0.6 |
| 2009/11/ 7 |
1.9 |
1 |
12.3 |
0.72 |
| 2009/11/21 |
1.7 |
1 |
3.96 |
1.14 |
| 2009/12/19 |
1.55 |
1 |
3.66 |
1.18 |
| 2010/ 2/ 6 |
1.4 |
1 |
0.74 |
1.20 |
3.Excelを使った重回帰分析
Excelには簡単に重回帰分析ができるツールがあります。
使い方は以下のサイト等に詳しく書かれていますので、そちらを参照してください。
http://www.geisya.or.jp/~mwm48961/statistics/mul_reg3.htm
http://gucchi24.hp.infoseek.co.jp/MRAEX1.htm
4.分析結果
分析結果は以下の通りですが、
重相関R=0.996, 重決定R2=0.991, 補正R2=0.986 と
極めて高い相関が認められました。
9個の観測に対する予測値では、最大の残差でも0.14で、
予測結果は実測値と非常に近い数値となりました。
5.回帰式
以上の計算結果から、回帰式は以下の通りとなります。
FT4 = 0.411421×TRAb - 0.53005×MMI服用量 - 0.05931×TSH + 1.209412
この式を使ってこれまでの検査結果からFT4を計算した結果と、FT4実測値を比較してみると
下の表のようになります。
重回帰分析による計算値
| 検査日付 | TRAb | MMI 服用量 | TSH | FT4 実測値 | FT4 計算値 |
| 2009/ 7/22 |
4.4 |
0 |
0.00 |
3.0 |
3.02 |
| 2009/ 9/ 2 |
4.3 |
4 |
0.00 |
1.0 |
0.86 |
| 2009/ 9/16 |
4.1 |
4 |
0.00 |
0.7 |
0.78 |
| 2009/ 9/30 |
3.5 |
4 |
0.18 |
0.5 |
0.52 |
| 2009/10/14 |
2.8 |
3 |
1.53 |
0.6 |
0.68 |
| 2009/11/ 7 |
1.9 |
1 |
12.3 |
0.72 |
0.73 |
| 2009/11/21 |
1.7 |
1 |
3.96 |
1.14 |
1.14 |
| 2009/12/19 |
1.55 |
1 |
3.66 |
1.18 |
1.10 |
| 2010/ 2/ 6 |
1.4 |
1 |
0.74 |
1.20 |
1.21 |
驚くほど実測値に近い計算結果が得られました。 びっくりです。
低濃度領域での現象で、変化も緩やかなので、線形近似が成り立ちやすいのかな。
尚、TSHの係数がマイナスになっているのは変だと思われるかもしれませんが、
FT4が上昇するとTSHは低下するという傾向を示していると理解すると良いと思います。
6.いくつか予測してみると・・・
(1)現在の状態で、メルカゾールの服用を中止した場合
現在の状態(TRAb=1.4,TSH=0.74)でメルカゾール服用量を0にして
FT4を計算してみると、
FT4 = 1.74
となりました。
このクリニックで示しているFT4の正常値は 0.82~1.63 なので
やはり、今中止すると過剰になるという結果になりました。
(2)メルカゾールの服用量を増やした場合
逆に、メルカゾールの服用量を2錠にして計算してみると
FT4 = 0.73
となり、低下となります。
現在の1錠/日という選択は正しいということですね。
(3)正常な状態でのFT4の値
仮に、TRAbが0になり、メルカゾールの服用を中止したとき、
つまり寛解したときのFT4がどのようになるか計算してみると、
(TSHは正常値範囲の中央値2.3として計算)
FT4 = 1.07
となりました。
やっぱり、ちょっと低めなのかなあ。
以上のように、簡単な計算で結構正しくFT4を予測できそうなので、
この方法でメルカゾールの服用量を決める参考にしてみるのも良いかなとも思いましたが
医学的には何の根拠もないので、信用しないでくださいね。