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バセドウ病について(33) 4月のFT4上昇は無痛性甲状腺炎?

 昨日、4週間ぶりの検査に行ってきました。

 結果はFT4が大きく減少し、甲状腺機能亢進症は順調に改善していました。

 メルカゾールは1日2錠に減量です。

20110611

 さて、病院からは毎回、血液検査数値を教えてもらっているのですが、今日の検査結果を見ると、前回、前々回のTRAbが修正されていました。

 先生に尋ねると、検査当日の数値は分析時間を短くした新しい検査法で約30分で数値が得られるのですが、精度にばらつきがあるとのことです。その後、より精密な従来法での検査結果が出たところで、数値を修正しているということでした。

 そこで、FT4が上昇した4月の値を見直してみると、TRAbは陰性(1未満)になっていました。それなのにFT4が上昇していたということは、この値だけで考えると、これはバセドウ病ではなく、無痛性甲状腺炎の可能性も考えられると思われます。

 無痛性甲状腺炎については、手近で見つけられた文献の抜粋を最後に掲載しておきます。

 これらをまとめて、今回のFT4とTRAbの変化について検討してみると、
以下のような症状の推移が考えられないでしょうか。

  昨年後半からバセドウ病は寛解期に入っていましたが、
  4月に花粉症の影響もあって、寛解時に起きやすい無痛性甲状腺炎を発症し
  TRAbは陰性のままFT4が上昇しました。
  今回のFT3/FT4比が2.4(=10.4/4.4)と、バセドウ病初期の頃の値6.8以上(30以上/4.4)ほど高くないことからも、
  無痛性甲状腺炎の特徴を表していると思われます。
  その後、この無痛性甲状腺炎が契機となりバセドウ病が再発しTRAbが上昇したのではないでしょうか。
  ただし、バセドウ病は軽症だったためFT4はすぐに低下しました。

 

これは、私が勝手に考えたストーリーですので、医学的な確証は全くなく
好奇心から得られた一つの推論です。

 

以下は参考文献です。

 

バセドウ病治療ガイドライン 2011  編集:日本甲状腺学会, 発行:南江堂

1 バセドウ病の診断基準
 3.鑑別診断

 問題となるのは、無痛性甲状腺炎との鑑別である。その診断ガイドラインを表4に示した。
 無痛性甲状腺炎は橋本病の経過中あるいはバセドウ病の寛解期に、自己免疫性炎症が甲状腺内で急速に起き、甲状腺破壊により血中に甲状腺ホルモンが漏出するために起こる一過性の破壊性甲状腺中毒症である。
 したがって、通常バセドウ病では甲状腺中毒症の持続期間が3ヵ月以上になるのに対し、無痛性甲状腺炎では中毒症の期間は原則として3ヵ月以内である。またバセドウ病とは異なり、TSH受容体抗体(TRAb)はほとんどの場合陰性である。放射性甲状腺ヨード摂取率またはテクネシウム摂取率検査を行うと確実に鑑別ができるが、実地医家ではこの検査は無理なので表2に掲げた各項目を参考にしながら経過をみていく必要がある。

表2 甲状腺中毒症の鑑別診断

バセドウ病無痛性甲状腺炎亜急性甲状腺炎
中毒症持続時間 3ヵ月以上 3ヵ月以内 3ヵ月以内
前頸部痛,発熱 なし なし あり
血沈,CRP 正常 正常 高値
TSH受容体抗体 (TRAb) 陽性 陰性 陰性
放射性ヨード摂取率 高値 低値 低値
甲状腺血流 高値 低値 低値

表4 無痛性甲状腺炎の診断ガイドライン
(甲状腺疾患診断ガイドライン2010)

a)臨床所見
 1.甲状腺痛を伴わない甲状腺中毒症状
 2.甲状腺中毒症の自然改善 (通常3ヵ月以内)
b)検査所見
 1.FT4高値
 2.TSH低値(0.1μU/mL以下)
 3.TSH受容体抗体陰性
 4.放射性ヨード(またはテクネシウム)甲状腺摂取率低値

【診断】
 1)無痛性甲状腺炎
   a) および b) の全てを有するもの
 2)無痛性甲状腺炎の疑い
   a) の全てと b) の1~3を有するもの

【除外規定】
 甲状腺ホルモンの過剰摂取例を除く

【付記】
 1.慢性甲状腺炎(橋本病)や寛解バセドウ病の経過中発症するものである。
 2.出産後数ヵ月でしばしば発症する。
 3.甲状腺中毒症状は軽度の場合が多い。
 4.病初期の甲状腺中毒症が見逃され、その後、一過性の甲状腺機能低下症で気づかれることがある。
 5.TSH受容体抗体陽性例がまれにある。

 

甲状腺疾患の疾病管理テキスト 監修:宮内 昭, 編集:網野 信行, 発行:メディカルレビュー社 

第2章 4 疾病管理 無痛性甲状腺炎の診断と疾病管理

  医療法人神甲会 隈病院内科  工藤 工

どんな病気
 当院では、未治療甲状腺中毒症の12.5%が無痛性甲状腺炎であるが、・・・一般の病院ではさらに頻度が高いと考えられる。
 男女比は1:4で女性が多く、30~60代の発症が多い。 ・・・
 病院への受診は暑い時期に多く外的要因の関与が認められるが、・・・現在のところ明らかな要因を照明するものはない。
 家族歴を持つことが多く、HLAに関連すること、バセドウ病の寛解後、慢性甲状腺炎(橋本病)などの甲状腺疾患や、その既往を持つ患者で発症することが多いことから、自己免疫機序が考えられている。

鑑別診断
 最も鑑別を要するのは、バセドウ病である。・・・発症初期や症状の発現時期が明らかでない場合には、バセドウ病と無痛性甲状腺炎の鑑別がより重要である。
 甲状腺機能でFT3/FT4比は、バセドウ病がより高値である、高感度TSH測定では無痛性甲状腺炎の約半数はわずかにTSHが測定されることなどからバセドウ病と鑑別されるといわれるが、完全ではない。TRAbがバセドウ病で特異的に高値になるため鑑別に有用であるが、無痛性甲状腺炎の約15%の症例で、TRAbが弱陽性となる。さらに、バセドウ病の既往のある人ではもともとTRAbが高値の場合があり、TRAbによって全例で鑑別できるわけではない。
 そこで、確定診断には甲状腺放射性ヨード摂取率や、テクネシウム摂取率が必要となる。・・・経過観察で甲状腺機能が低下することにより鑑別できることもある。
 さらに当院では超音波検査で甲状腺血流を定量測定し、4%以上はバセドウ病、3~4%以下は無痛性甲状腺炎と鑑別している。

治療
 無痛性甲状腺炎による甲状腺機能異常は、自然に改善するため治療は経過観察のみでよい。甲状腺中毒症状が著明な場合にはβ遮断薬が有効であるが、抗甲状腺薬は無効(禁忌)である。
 無痛性甲状腺炎の場合、甲状腺中毒症後に発症する甲状腺機能低下症は通常自然に寛解するため、自覚症状がなければ経過観察のみで治療の対象とはならない。

予後
 寛解後も再発する症例が多くみられる。その再発率は報告により様々であるが、当院で3年以上経過観察された症例で検討すると、38.8%である。特に16.5%では3回以上再発しており、5年間で7回再発した症例も存在する。
 また、小数ではあるが、無痛性甲状腺炎後にバセドウ病を発症する症例が存在する。特にバセドウ病寛解中に無痛性甲状腺炎を発症した症例で多くみられるため、甲状腺機能が落ち着いた状態であっても、半年後に甲状腺機能を測定する必要がある。

 

綜合臨牀 Vol.58 No.7 2009年7月号 特集「甲状腺疾患をマスターする」 発行:永井書店

破壊性甲状腺中毒症

  獨協医科大学内分泌・代謝内科  清水裕晶,(准教授)門傳剛,(教授)笠井貴久男

原因疾患別の病因・病態
2.無痛性甲状腺炎

 本邦における甲状腺中毒症の約10%を占め、バセドウ病によるものに次いで多い。
 一過性の破壊性甲状腺中毒症(1~3ヵ月)に続いて60~70%の症例ではRAIU(放射性ヨード甲状腺摂取率)が抑制された甲状腺機能低下症に移行する。このうち約10%の症例で機能低下が蔓延し、まれに永続的機能低下を生じる。

 本症は発症形式として自然発症型と、出産後発症に分類される。前者の誘因は多くが不明であるが、花粉症、Cushing症候群術後、ACTH単独欠損症の発症など誘因が推定できる場合もある。
 

 

飯高医院  飯高誠 (元埼玉医科大学内科内分泌代謝部門教授・内分泌代謝科専門医)

診療余話

第八話:無痛性甲状腺炎

 一般的には、バセドウ病ではTSHレセプター抗体が陽性で、無痛性甲状腺炎では陰性です。しかし、バセドウ病でも5%程度陰性の人がいますし、無痛性甲状腺炎でも陽性になる場合があります。今年のイギリスの雑誌Clinical Endocrinology (60:49-53,2004) に"Stimulation of TSH receptor antibody production following painless thyroiditis"と言う題名で論文を出しました。寛解期のバセドウ病患者でも、無痛性甲状腺炎が契機となり後に再発することがあるというものです。この論文が、アメリカ甲状腺学会(ATA)の機関誌であるClinical Thyroidology(16:15,2004)に取り上げられました。この雑誌は、世界中の関連する学術誌より興味深い論文をピックアップして、編集者のコメントを添えて会員に紹介しております。専門的な話で恐縮ですが、ATAの機関誌に取り上げられたことは、会員に紹介に値する内容と認められた事だと思います。無痛性甲状腺炎は、その原因も不明な点が多く、今後も研究が続く疾患の一つだと思われます。

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コメント

はじめまして!いつもブログ拝見させていただいています。
私は去年の11月にバセドウ病と診断されて、今はメルカゾールとチラーヂンを併用しています。
こちらのブログで色々勉強させていただいています。
花粉症の影響で悪化や再発があるのもはじめて知りました。
ホントにバセドウ病は、なかなかすんなり治ってくれなくて根気がいりますね。

私はバセドウ診断時、TRAb:4.8、TSH:0.01以下、FT4:2.5、FT3:6.5、くらいでした。TRAbの数値が高い方が、ホルモン値も高くなるのかと思っていたんですが、また違うみたいですね。なかなか他の方の数値を見させていただくことがないので、色々見比べてしまいました。
私は、3錠で治療開始して1ヶ月半くらいでホルモン値は基準値に入ったんですが、その後ちょっと下がりすぎて、3ヵ月後くらいからメルカ1錠+チラーヂン1錠で継続しています。併用してからは数値は落ち着いているんですが、治療開始して5ヶ月でTRAbがまだ4.3だったのがちょっとショックでした。5ヶ月で0.5しか下がってないので、何でだろうと考えたんですが分るわけもなく、来週また受診日なので今度はもう少し下がってくれてたらいいなあと思っています。

何だか自分のことばかり長々とスミマセン。
普段話すところがないので、つい長々と書いてしまいました。
お互い早く良くなるといいですね。また、ブログお邪魔させてください☆

投稿: aki | 2011年6月25日 (土) 16時48分

aki さま

コメントいただきましてありがとうございます。
ホルモン値が早期に正常になって良かったですね。TRAbは私もなかなか低下しませんでした。
メルカゾールはホルモンの生産を抑制する薬で、TRAbを下げるものではないため、しかたないですが。
甲状腺薬の減量法につきましては、バセドウ病について(20) 抗甲状腺薬の減量法 をご参照ください。
それから、最近買った「バセドウ病治療ガイドライン2011」によると、最小量(隔日1錠)を維持した期間が長いほど、寛解率が高かったようです。 (隔日1錠を19カ月以上継続した場合には92.3%)
気長に薬を服用しないといけないみたいですね。

それでは、また、お立ち寄りください。

投稿: Diary or Notes | 2011年6月26日 (日) 17時02分

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