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バセドウ病について(9) 『メルカゾール』と『チラーヂン』の併用 ( Block and Replacement Therapy ? )

私がバセドウ病で受診している病院の医師は、『メルカゾール』と『チラーヂン』を併用するという治療法を採用しています。

メルカゾール』は「抗甲状腺薬」で、甲状腺ホルモンが合成されるのを抑制する薬です。
一方、『チラーヂン』は「甲状腺ホルモン」そのものです。

ブレーキ(メルカゾール)を掛けながら、アクセル(チラーヂン)を踏むような感じですが、このような治療法が採用されるケースについて記載がある文献を調べたところ、以下のようなものがありました。

 

1.バセドウ病薬物治療のガイドライン(2006) 59ページ
 編集 日本甲状腺学会

Ⅳ 甲状腺薬による治療法

解説[3]
 前述のように、少量T4剤の長期併用療法を行う必要はない。また、寛解率を高める目的で大量の甲状腺薬を用いるべきではない。
 ただしこれとはまったく別に、MMI(メルカゾール)の増減にともなって甲状腺機能が容易に変動しやすい症例に対して、甲状腺機能を押さえ込むことのできる量のMMI(15~30mg/日)を、正常の甲状腺機能を保つのに必要なT4量と併用して用いることは、しばしば行われる方法である。これは寛解率を高めることを目的とした方法ではなく、安定した甲状腺機能を得るための方法であり、維持量になった後もしばしば再燃するような症例、特に3、4ヵ月毎しか診察できないような症例には有効な手段である。 Block & Replacement Therapy という名のもとに、両者を混同しないよう注意されたい。
  

 

2.甲状腺機能異常の治療薬について www.pariet.jp
 岐阜大学大学院医学系研究科 内分泌代謝病態学分野 廣田卓男 / 准教授 宗友厚
 http://www.pariet.jp/helpful/vol54/no560/sp10.html

 抗甲状腺薬と甲状腺ホルモン薬を同時に内服されている患者さんを時々見かけますし、われわれもときに併用処方をすることがあります。

 以前、高い寛解率を得るために免疫抑制作用を期待して多量の抗甲状腺薬(MMI40㎎~100㎎/日)を用いると共に、甲状腺ホルモン低下を防ぐために甲状腺ホルモン薬を併用する、といういわゆるBlock and Replacement Therapyが検討されたことがあります。しかし、抗甲状腺薬の副作用が増加しただけで、長期的に寛解率を高めるというエビデンスは結局得られませんでした。また1991年 Hashizumeら1)は、抗甲状腺薬で6カ月治療後のバセドウ病患者に、少量甲状腺ホルモン薬を加えた群と加えなかった群とを比較し、甲状腺ホルモン薬を加えた群でバセドウ病の再発率が有意に低下したと発表し注目を集めました。しかしその後いくつもの追試が行われましたがその効果は認められず、彼らの成績は例外的なものであるとされています。2)以上の結果から現在、寛解率を高める目的で抗甲状腺薬に甲状腺ホルモン薬を併用する必要はないとされています。

 ただし、抗甲状腺薬減量の過程で甲状腺ホルモンが変動しやすい、不安定な症例が見られます。MMI10㎎/日では甲状腺ホルモンが低値となり、MMI5㎎/日に減量すると機能亢進症が再燃するといった例がそれに当たります。ご質問の症例もこのような例と考えますが、寛解率を高める目的ではなく、甲状腺機能を正常化、安定化させるために必要な甲状腺ホルモン薬を少量加えるという『アメとムチ』的処方はときに行われる方法なのです。あくまでも甲状腺機能を正常化させるという基準で用いますので、長期的に抗甲状腺薬を中止できる見込みがない場合は他の治療法を考慮する必要があります。
  

3.田尻クリニック 公開コーナー バセドウ病 No.107
http://www.j-tajiri.or.jp/communication/exhibit/01/107.html

 メルカゾールとチラーヂンSの併用療法は、ヨーロッパなどでは以前よりよくされていました。これはblock & replace therapyといわれています。すなわち、バセドウ病の免疫的機序をメルカゾールで十分に抑え込み(block)、甲状腺機能低下症になるのでチラーヂンSを一緒に投与(replace)するわけです。一般的には、治療開始時から2~3ヶ月してからメルカゾールとチラージンSの併用を始めます。最初は、メルカゾールのみです。メルカゾール4~6錠/日とチラーヂンS2錠/日の併用が多いと思います。

最近、日本の研究者が、そのような メルカゾールとチラーヂンSの併用療法を行ったら、寛解率が90%以上になったという論文をアメリカの一流雑誌に掲載 1) しましたので、一躍脚光を浴びました。しかし、その後の追試研究では否定的なものが、多いようです。わたしが メルカゾールとチラーヂンSの併用療法を行う場合は、メルカゾールを1~2錠に減量すると 甲状腺ホルモンが高くなり、メルカゾールを増量すると効きすぎて 甲状腺機能低下症になる人に対して、稀に メルカゾール1~2錠/日とチラーヂンS1錠/日程度の併用をすることが、あります。

 

(参考):T4剤(チラーヂン)併用で再発率が低減できたとする論文 (信州大学 橋爪ら 1991)
1) K Hashizume, K Ichikawa, A Sakurai, S Suzuki, T Takeda, M Kobayashi, T Miyamoto, M Arai, and T Nagasawa
Administration of thyroxine in treated Graves' disease. Effects on the level of antibodies to thyroid-stimulating hormone receptors and on the risk of recurrence of hyperthyroidism
N Engl J Med (1991) Vol.324:947-953
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/324/14/947

METHODS AND RESULTS. ・・・One patient in the thyroxine-treated group (1.7 percent) and 17 patients in the placebo group (34.7 percent) had recurrences of hyperthyroidism within three years after the discontinuation of methimazole.
CONCLUSIONS. The administration of thyroxine during antithyroid drug treatment decreases both the production of antibodies to TSH receptors and the frequency of recurrence of hyperthyroidism

  

 

これらを総合すると、

 ・ 『メルカゾール』を投与していたらFT4が低下し過ぎて、次に『メルカゾール』を減量したら今度はFT4が過剰になってしまうような不安定な場合。
 ・ 特に、『メルカゾール』を維持量(2日で1錠)にしているときに、コントロールが難しい場合。
 ・ 更に、血液検査を数ヵ月(3~4ヵ月)行えないようなとき。

に、
『メルカゾール』で甲状腺でのホルモン生成を抑制しておいて、『チラーヂン』でホルモンを適正量にするときに併用するようです。

 

さて、私の場合、医師は『メルカゾール』を減量せずに『チラーヂン』を処方しています。話を聞いていると、「TRAb」が陰性になるまで『メルカゾール』を減量するつもりはないようです。

これは『メルカゾール』で上記のように「ホルモン量をコントロールできていない場合」とは言えないと思います。
『チラーヂン』を処方する前に、まずは『メルカゾール』を減量してホルモン量をコントロールすることを第一に行うべきではないのでしょうか。

私が疑問に思うのは『チラーヂン』を処方することよりも、『メルカゾール』を減量しないことなのですが、というのも、最近の体調は、どうも、「甲状腺機能低下症」に陥っているように感じるためです。
どうやら、私を診察している医師は「バセドウ病」が再発するよりは「甲状腺機能低下症」になる方がマシと考えているのかもしれません。

私としては、うまくコントロールして「正常な状態」にしてもらいたいのですが・・・

そのため、自己判断で『メルカゾール』を減量しています。

そして、このような状況にはストレスを感じます。

 

以上のような、疑問や不安を抱えているので、今週末には専門医を受診することにしました。これで、すべて解決することを期待しています。

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コメント

いつも良く調べられてますね。すごいです。
私の担当の先生も不安定な場合とおっしゃっていたように思います。

抗体検査ですが、私は最初のクリニックで一度しただけです。
すみれクリニックでも抗体検査はしてませんし、次の予約の検査項目にも入ってないです。

tessen さん。 いつも見ていただいてありがとうございます。
すごいと言っていただくと嬉しいですが、ちょっと気恥ずかしいです。

抗体検査(TRAb)は、「甲状腺機能亢進症」「甲状腺中毒症」における
初期診断で「バセドウ病」を確定するために必要ですが
治療中は特に頻繁に検査する必要はないのかもしれません。
メルカゾールの減量は、FT4が正常範囲に入るように、
またTSHが測定されるようになったらTSHが正常範囲に入るように
コントロールすることが、ガイドラインで推奨されており
このときにはTRAbは特に考慮されません。

TRAbが関係するのは甲状腺薬の中止を決定するときで、
投薬中止時にTRAbが陰性だと寛解率が高いという結果があります。
但し、TRAb陽性でも約30%は寛解するため正確な予測は不可能です。
従って、TRAbを参考として投薬中止を考慮されるようです。

以上は、ガイドラインに記載されている内容です。

それから、TRAbは院内で検査せずに検査会社に外注しているところが多いようです。
私が通院している病院でも、FT4、FT3、TSH、その他一般的な検査項目は採血後1時間で結果が出ますが、
TRAbは外注へ依頼しているので、早くても数日~1週間を要します。
そのため、あまり検査をしないのかもしれませんね。

仕事柄、調べ始めると納得するまでやってしまうので
後から見ると、ちょっと過剰な感じもして、
やはり気恥ずかしいです。。。

すごいですね。専門医顔負けの調べ方になっていると思います。

その後専門医に代わっても、TRAb陰性化になるまではめるかぞーる減量しないといわれましたか?

わたしも気になっています。

yutarisou さま
コメントをいただきありがとうございます。
それから、返事が遅くなりまして申し訳ありません。
今日までコメントに気付かなかったものですから・・・coldsweats01

専門医の先生は、TRAb にとらわれず、
主に FT4 の値で投薬量の調整をされているように思います。

例えば、
バセドウ病について(20) 抗甲状腺薬の減量法
http://diary-or-notes.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-fb65.html

とか、

バセドウ病について(34) 抗甲状腺薬1錠隔日投与法と寛解率
http://diary-or-notes.cocolog-nifty.com/blog/2011/06/post-3426.html

が、大方の専門医の考え方のようですね。

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