『陽炎座』 鈴木清順監督 1981年公開作品
今日は 昨日の『ツィゴイネルワイゼン』 に引き続き鈴木清順監督作品の『陽炎座』を観ました。
これは 泉鏡花 が大正2年に書いた同名の物語を原作としていますが、映画では狸囃子に誘われて子供芝居を観るところが写されています。映像はとても美しく、鏡花の妖艶な世界が具現化されています。
鏡花は水をモチーフとすることが多いのですが、この映画でもタイトルバックの水の流れから始まり、度々使われる川と舟のシーン、品子が樽の中の水に浸かりほうずきが水面を覆う有名なシーン(このシーンは公開当時のTV-CMに使われていたと記憶しています。)など、鏡花の小説世界を映像イメージとして作り上げています。
また、この他にも「小鳥」「金沢」「夜叉ヶ池」など鏡花の世界観を表現するエピソードが沢山盛り込まれています。
鈴木清順監督も言われているとおり、鏡花の小説はその文体の美しさに先ず大きな感銘を受けます。当に声に出して読み上げたくなる音の流れの美しさとリズム感がそこにはあります。
また、登場人物の身なり装束の細かな描写から始まる書き出しは、読み手の頭の中に小説の世界をたちどころにイメージさせる優れた効能があり、読者は瞬く間に物語の中に引き込まれていきます。
なお、原作には『お稲さん=お稲荷さん』、『美しい女(ひと)=白狐』という記述があり、狸と狐に化かされるということが、より明示的に表現されています。
ただ、今後、泉鏡花を読む人は急速に少なくなっていくでしょうから、もしかすると、鈴木清順監督が撮ったこの作品が鏡花を題材とする最後の優れた映画になってしまうのかもしれません。それはとても残念なことですが、消えゆく美の世界に触れられた奇跡に、今はただ感動するばかりです。
『陽炎座』
監督:鈴木清順
出演:松田優作、大楠道代、原田芳雄、中村嘉葎雄、加賀まりこ、楠田枝里子、大友柳太朗
公開:1981年8月21日
配給:リトル・モア 日本ヘラルド映画
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< 2009.5.5 追記 >
映画・演劇についてすばらしいサイトを見つけました。↓
四度目の逢瀬は恋になります。 - 東京退屈日記
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コメント
こんにちは、「東京退屈日記」を書いているものです。ご紹介いただきましてありがとうございます。
泉鏡花は高校時代、恩師に教えていただいて知りました。読書の時間がおおいにあった時期ですので、本も買って読みふけりました。見慣れない言葉にぶつかると、注釈を読んで、また本文に戻り、意味がわかった上で再読するとあまりの文章の美しさにとろけそうな気分になったことを覚えています。
幻想的な世界を描いているからか、夏が近づくと今でも読みたくなります。青空文庫に「陽炎座」があることをこのブログで初めて知り、嬉しいです。
投稿: Mariko | 2009年5月 6日 (水) 23時45分
Mariko様
コメントをいただきましてありがとうございました。
私も鏡花を読み始めたのは高校時代だったと思います。たぶん「夜叉ヶ池」「高野聖」あたりからだったでしょうか。大学の頃も「ちくま日本文学」や国書刊行会の「日本幻想文学集成」などを買っていました。
あの流れるような文体と描写力、ストーリーの組立は一度虜になると一生の嗜好性癖にまで影響してしまうようです。
今となっては、あのような文章を書く作家はもう二度と現れないでしょうね。
そして鈴木清順のような映画を撮る人も。
実は、私の周りで泉鏡花を読んでいるという人に出会ったことがありませんでした。ましてや、今の世代で好きな作家に挙げる人は、そうそう居ないだろうと思っておりましたので、「東京退屈日記」の記事を読んだときは同士に会ったような嬉しさを覚えました。
これからも少しずつ「東京退屈日記」を拝読させていただこうと思っております。
(何分、膨大な量の文章が書かれているので・・・)
ところで「青空文庫」には泉鏡花の作品が128も公開されていますね。
実は同士は思っているよりも沢山居るのかも。
投稿: Diary or Notes | 2009年5月 7日 (木) 03時22分