中国産ウナギから検出された「マラカイトグリーン」とは
中国産ウナギから検出された抗菌剤(殺菌剤)として「マラカイトグリーン」という名前をよく聞くようになりましたが、いったい「マラカイトグリーン」とは何なのか調べてみました。
<何に使用するのか>
元々は染料として、絹、羊毛、綿、紙等の染色に使用されているものです。
また、抗菌作用があることから、魚が糸状菌(カビ)に感染して病気になるのを防ぎ、治療するのにも使用します。(観賞魚の水カビ病、白点病等の治療薬です。)
以前は日本でも養殖魚等の病気治療用の抗菌剤として使用されていました。
安価で利用しやすく抗菌効果も高かったことから、水産業において水カビ病の治療薬として広く使用されていました。
なお、観賞魚用の薬品でよく似ているものに「メチレンブルー」がありますが、全くの別物です。メチレンブルーの毒性はマラカイトグリーンよりも弱い(1/10~1/20)と言われています。
<どのような薬理作用があるのか>
マラカイトグリーンは水カビの中で還元されてロイコマラカイトグリーンになるときに、活性酸素を発生し水カビを内部から破壊すると考えられています。
また、糸状菌の核酸塩基と親和性を持つため、DNA及びRNAの生合成を阻害すると考えられています。
<なぜ使用が禁止されているのか>
マウスやラットの実験で発がん性が示唆され、遺伝毒性も否定できないことから、ヒトへの影響が考えられるためです。
<規制値は>
検出されてはいけません。
<検出限界は>
マラカイトグリーン、ロイコマラカイトグリーン共に2ppb(=0.002mg/kg)です。
<海外の状況は>
米国、欧州、中国等で食用動物への使用が禁止されています。
<規制の経緯>
1953年頃~ 水カビ病等の治療薬として日本国内に普及
1981年 米国、食品への使用を禁止
2002年 米国研究者によるマウス実験での発がん性の疑いの報告
欧州、食品への使用を禁止
中国、食養魚への使用を禁止する法律を制定
2003年7月 薬事法改正による養殖水産動物への使用禁止(猶予期間設定あり)
2005年2月 代替魚卵消毒薬「ブロノポール」 (商品名「パイセス」)輸入認可
2005年8月 猶予期間終了、全面使用禁止
2005年9月 厚生労働省 食品安全委員会へ食品健康影響評価意見要求
2005年11月 食品安全委員会 食品健康影響評価の結果通知
中国では日本よりも先に使用禁止にされているのですが、そもそも法律を守る気が無いのだから、何にもなりません。
これに限らず、中国では水質汚濁や大気汚染等でも法律上は立派な規制値が決められているのに、実態が全く伴っていないというのが実情です。
<名称>
マラカイトとは孔雀石のことで、緑色の色調が似ているために「マラカイトグリーン」と命名されています。
<物性>
構造式
分子式
マラカイトグリーン C23H25N2
ロイコマラカイトグリーン C23H26N2
分子量
マラカイトグリーン 329.47
ロイコマラカイトグリーン 330.48
常温における性状
マラカイトグリーン 青緑色の結晶
ロイコマラカイトグリーン 白色の結晶
溶解性
共に水に可溶
溶解度(マラカイトグリーン蓚酸塩) 6g/L(20℃), 54g/L(50℃)
水溶液pH(マラカイトグリーン蓚酸塩) 2.3~2.5 (10g/L・20℃)
<適用法令>
毒物及び劇物取締法 : 劇物
<毒性>
急性毒性 (ラット・経口) LD50 952mg/kg
---参考情報---
<厚生労働省>
・中国産養殖鰻のマラカイトグリーン検出について 厚生労働省 食品安全部監視安全課 平成17年8月4日
・中国産養殖鰻のマラカイトグリーン検出についてのQ&A 厚生労働省 食品安全部監視安全課 平成17年8月4日
・養殖魚に対するマラカイトグリーンの分析法について 厚生労働省 医薬食品局食品安全部監視安全課長 食安監発第1216002号 平成1 6 年1 2 月1 6 日
・薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会議事録 平成18年2月9日議事録
・食品中のマラカイトグリーンの試験法について 厚生労働省 医薬食品局食品安全部監視安全課 食安輸発第0525003号 平成18年5月25日
・食品衛生法第26条第3項に基づく検査命令の実施及び平成18年度輸入食品等モニタリング計画の実施について 厚生労働省 医薬食品局食品安全部監視安全課 食安輸発第0616002号 平成18年6月16日
・食品中のマラカイトグリーンの試験法等について 厚生労働省 医薬食品局食品安全部基準審査課長 監視安全課長 食安基発第1013001号 食安監発第1013003号 平成18年10月13日
・平成18年度輸入食品監視指導計画監視結果 中間報告 平成18年11月 厚生労働省医薬食品局食品安全部
<農林水産省>
・飼料原料となる魚粉へのマラカイトグリーン及びロイコマラカイトグリーンの混入について 農林水産省 平成18年11月30日
・魚粉を使用した飼料の品質管理の徹底について 農林水産省消費・安全局畜水産安全管理課長 18消安第9467号 平成18年11月30日
<食品安全委員会による食品健康影響評価>
・マラカイトグリーンについて 食品安全委員会 平成17年9月16日
・マラカイトグリーンについて(情報) 食品安全委員会 平成17年9月15日
・食品健康影響評価について(マラカイトグリーン及びロイコマラカイトグリーン) 食安第0913013号 平成17年9月13日
・食品健康影響評価の結果の通知について 食品安全委員会 府食第1140号 平成17年11月24日
ヒトにおける発がんリスクは明確ではないが、・・・げっ歯類における発がん性が示唆され、遺伝毒性も否定できないことからマラカイトグリーン及びロイコマラカイトグリーンにADIを設定することは適当ではない。
注)ADI:Acceptable Daily Intake 一日摂取許容量
ADIを設定できない=検出されてはいけない
・動物用医薬品評価書 マラカイトグリーン及びロイコマラカイトグリーンの食品健康影響評価について 食品安全委員会 動物用医薬品専門調査会 2005年11月
<長野県養殖場への立ち入り調査結果>
・長野県養魚場への立入り調査 マラカイトグリーン使用実態調査 長野県農業生産振興チーム 食の安全・生活衛生チーム 2006年05月19日
<公立研究所の分析方法に関する報告>
・LC/MS/MS による養殖魚類中のマラカイトグリーンおよび代謝物ロイコマラカイトグリーンの分析 福岡市保健環境研究所保健科学部門
<マラカイトグリーンのMSDS>
・マラカイトグリーン(しゅう酸塩) 昭和化学株式会社
・マラカイト・グリン 株式会社内藤商店(製造者 米山薬品工業株式会社)
・マラカイトグリーン(しゅう酸塩) 大陽日酸株式会社
<観賞魚用マラカイトグリーン>
・日本動物薬品株式会社 マラカイトグリーン水溶液「アグテン」
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